【イベントレポート】200名の大合奏!ブラス・ジャンボリーin京都
令和7年3月9日(日曜)に、京都テルサにて「Music Fusion in Kyoto音楽祭 ブラス・ジャンボリーin京都」(京都府主催)が開催されました。この音楽イベントは、過去に管楽器や打楽器を経験していたけれど、仕事や子育てなどで一度音楽を離れていたという方を対象に、大勢で演奏することを通じて再び音楽への情熱を呼び起こし、生活の中に音楽を取り入れて心を豊かにしていくことを目的とした、府民参加型の音楽祭です。
イベント当日の様子と、そして参加者の声をレポートします。
笑顔が絶えないリハーサル
本番当日の午後2時、会場となる京都府民総合交流プラザ 京都テルサのテルサホール内には、さまざまな楽器の音色が溢れていました。本日の演奏者は、抽選によって選ばれた京都府民121名と、京都府立桃山高校吹奏楽部の部員76名を合わせた、約200名の大編成吹奏楽団。さまざまな年代、バックボーンを持った演奏者の皆さんですが、そのほとんどが、今日初めて顔を合わせるため、会場の雰囲気はまだ少しぎこちなく、緊張気味です。
そこへ登場したのが、本日の指揮者を務める、米米CLUB BIG HORNS BEEメンバーであり、サクソフォーン奏者でもある織田浩司(おりたこうじ)さん。
「通常のブラス・ジャンボリーは全国各地から人が集まってくるものですが、京都のブラス・ジャンボリーは特別です!京都の人たちによる、京都だけの、京都のブラス・ジャンボリー! 本番もですが、リハーサルもなるべく皆さんと一緒に楽しみたい。一番大事なことは、皆さんが楽しく演奏していただけること。楽しむ気持ちがあれば大丈夫ですので!」
織田さんによるあたたかな激励で、会場の雰囲気が一気に変わりました。
今回のブラス・ジャンボリーはレベル不問であり、久々に楽器を演奏するという方が大半を占めます。
そんな演奏者たちの不安を前に、織田さんは「ここ、ピンチだなと思う時は、笑っていてください。吹ける人は積極的に吹いていただいて大丈夫。最初の音と、最後の音がなんとなく一致すればセーフ!」と伝えます。
演奏者の皆さんの表情も、だんだんと笑顔に、そして演奏も初めて全員で合奏するとは思えないほど統一された、迫力ある音色がホール内に響き渡りました。
今回演奏する5曲それぞれを、1回通しで演奏してみて、気になる部分について部分練習、最後にまた1回通しで演奏し、2時間にわたるリハーサルが終わりました。
全5曲を本番で披露!スペシャルゲストも登場
リハーサルから約30分の休憩を挟んで午後4時半より、いよいよ本番開演です。開演までに観客席も続々と埋まり、立ち見も出るほどの盛況ぶりでした。まず1曲目は、「ブラスジャンボリーのためのファンファーレII」。華やかな音色とともに「ブラス・ジャンボリーin京都」が始まりました。
1曲目の終了後、司会を務めるNHK京都放送局キャスターの石井美江アナウンサーが登場し、演奏会を見にきた200名もの観客に本日のイベントの趣旨を説明。指揮者の織田さんも紹介され、「この会場にいる演奏者と観客、400名全員で音楽を楽しむ素敵な時間にしましょう」との挨拶がなされました。
2曲目は、京都ではお馴染みの京都アニメーションが制作した、吹奏楽をテーマにしたTVアニメ『響け!ユーフォニアム』のオープニングテーマ「DREAM SOLISTER」です。『響け!ユーフォニアム』は、京都府宇治市を舞台にした大人気アニメで、会場内も一気に盛り上がりました。
そしてここでスペシャルゲスト、トランペット奏者の上田じんさんが登場。上田さんは京都市出身の演奏家で、現在は名門シエナ・ウインド・オーケストラで活躍中のトランペット奏者です。『響け!ユーフォニアム』のキャラクター・高坂麗奈のトランペットを担当されており、収録時の裏話を始め、アニメの名シーンで吹かれたトランペットのソロを、特別に披露してくださいました。生の音は圧倒的で、会場を大いに沸かせましたよ。
3曲目は、吹奏楽の中でも圧倒的な人気を誇る「シング シング シング」。曲の随所に各楽器の掛け合いや合いの手があり、リズミカルなドラムの躍動感を楽しめる曲です。今回はサクソフォーン奏者の織田さん、トランペット奏者の上田さんのソロにも注目が集まりました。
4曲目は、観客の皆さんにも合唱に参加いただく名曲「翼をください」です。観客の皆さんは手元のパンフレットに載せてある歌詞を見ながら、演奏に合わせて大合唱しました。
曲と曲の合間には、演奏者や観客の方へのインタビューもありました。奥さまが演奏者として参加されてあり、観客席から子ども達と一緒に見守っていたご主人の「家事と育児の合間に練習していてすごいなと。本番を見て、涙が出るくらい感動しました」と言う感想に、会場も感動。観客席の方々は、演奏者のご家族や友人も多かったことから、練習を一緒に見守り、応援してきた側の気持ちを皆で共感できる、良い時間となりました。
5曲目は、ブラス・ジャンボリーのラストを飾る曲「宝島」です。サンバの軽快なリズムから始まり、迫力のある音の重なりと爽やかなメロディーラインが印象的なこの曲は最後にふさわしく、素晴らしい演奏となりました。また、終幕後のアンコールでは「宝島」のショートバージョンが披露され、演奏者も観客も誰もが手拍子、最後は大喝采の中、「ブラス・ジャンボリーin京都」はグランドフィナーレを迎えました。
参加者の声「また、音楽をやりたくなりました」
ここで、今回参加された方々の声を、紹介します。「8年ぶりに楽器を吹きました。感無量です」「200人と一緒に吹くことは吹奏楽の醍醐味だなと思います。織田さんに指揮していただくと、皆さんのやる気やモチベーションを上げてくださるので、吹いていてとても楽しいです」「この演奏会をキッカケに、また集まって音楽をやりましょうという話が出ています」このように、今後の演奏活動に向けて具体的に動き出そうとしておられる参加者もいらっしゃいました。
最後に、印象的だったエピソードを紹介します。中学生の娘さんが不登校気味だというお母さんと出会いました。娘さんは吹奏楽部に所属しており、お母さんも鍵盤(打楽器)の経験があったことから、今回2人で申し込み、親子で参加することになったそうです。「知らない人たちばかりなのに、1曲の音楽でつながれるのは素晴らしいことだと思います。こういう場があることを、もっと知って欲しい。娘は小さい頃から音楽が好きで、この機会は娘も楽しいみたいでやってよかった。今後、何かのキッカケになればと思います。良い企画に出会えました」と、笑顔で語ってくれました。
さまざまなバックボーンを持ち、世代を超えて1日限り、一期一会の吹奏楽団による演奏会は、演奏者、観客の双方に素敵な思い出を残しました。このイベントを通じて得たつながりやモチベーションを元に、ぜひ、これからの日常の中で、音楽を取り入れていただければと願います。